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クライマックスシリーズ第2ステージその3〜落合の皮算用〜2008-11-01 Sat 14:01 いかなる時でも客観的に最も勝つ確率の高い手を打つ落合という将にとってこのクライマックスシリーズ第2ステージの勝算は第2戦で事実上潰えていた。 もちろん勝敗は机上の空論通りにならないことは承知しているが一軍を率いる将たる者なんらの計算なしにただ闇雲に戦うなどということはありえない。 ましてや勝負においては徹底した確率論を用いる落合ならなおさらのこと。 第2ステージの巨人戦に勝つための戦略としてあえて山本昌を阪神戦では登板させなかったのも目の前の試合を勝つことではなくあくまでクライマックスシリーズ全体を通して勝ち抜くための最良の策を選択した結果だったことは既に述べた。 その山本昌を第2ステージ初戦に起用し巨人先発グライシンガーとの初戦に当てた落合の策は最終回に決勝点を奪って勝つことで実を結んだ。 この試合はさすがに重要な初戦ということもあってか両投手ともに好調とは程遠い出来であったが結果として温存した山本昌でエースグライシンガーを潰したのだからまずは落合にとっては改心の勝利だっただろう。 だがこれではまだ巨人に勝つための最低条件をクリアしたに過ぎない。 1勝のアドバンテージがある巨人と星勘定の上では並んだ計算になるが落合にはまだ自軍の不利な状況は明らかであり勝負を互角に持っていけるかどうかは次の第2戦にかかっていた。 と言って第2戦を取らないといけないというわけではない。 いや、恐らく落合はこの第2戦ははじめから捨てていただろうと思う。 したがって第2戦が終わって1勝2敗と再び一つ負け越すところまでは計算どおりだっただろう。 だが落合にとってこの第2戦は勝敗とは別の意味で最も重要な一戦であった。 それは最終となる第6戦の先発を探す試合という意味でだ。 3勝3敗となって第6戦にもつれ込んだ場合巨人が中4日でエースグライシンガーを出してくることはほぼ確実であった。 グライシンガーは元々100球中4日というリズムを得意としており決して無理な間隔ではない。 そして絶不調だった前半戦を除けばグライシンガーが2試合続けて5回もたずにノックアウトされたということはこれまでにない。 ましてや中日戦は本来レギュラーシーズンでは得意にしていた相手。 初戦は緊張からか制球を乱したが2度続けて同じような失態を演じると期待するのはあまりにも楽観的に過ぎるだろう。 諸条件を考え合わせると最終戦まで持ち込まれた場合先発投手がある程度試合を作れないと一方的に大敗する可能性が高いことになる。 問題はその最終戦に投げさせる中日の先発であった。 いかに巨人戦に相性が良いとは言え初戦に投げた山本昌を中4日で登板させるという策は他にどうしようもない場合以外はあえて選択しないだろう。 では果たして他に誰かいるのか? これこそ今季の中日の問題点であり落合が1勝1敗でも圧倒的に自軍が不利と見ていた理由であった。 今季中日ではチェン、吉見、浅尾、清水といった若手投手の台頭が見られた一方で本来ならそろそろ川上とエースの座を競う位置に来なければいけないはずの中田、朝倉、山井、小笠原といったピッチャー陣が伸び悩みや故障で期待通りの戦力とはならず、それが巨人、阪神に10ゲーム差以上を離された最大の要因となったことは間違いない。 クライマックスシリーズを前に落合はこんなコメントを残していた。 「ようやくクライマックスシリーズを戦える準備は出来た」 それは今季期待はずれであった4投手の内特に二軍で調整を続けていた3人、朝倉、山井、小笠原のいわゆる宮崎組にようやく投げられる目処が立ったことを意味していた。 実戦から遠ざかっているという不安材料を除けば最終戦でグライシンガーと投げ合える力のある投手は中田かこの宮崎組の誰かしかしない。 その中田は第1ステージの阪神戦で中継ぎテスト登板し僅か1イニングももたず試合を壊すという大失態を演じていた。 いかに投げてみないと分からないタイプの投手といっても最終戦を任せるにはあまりにもひどい内容でありこの時点で中田の先発は事実上消えたと言ってよい。 となると残るは宮崎組の3人のみ。 そこで落合が考えた戦略は第2戦を捨ててこの宮崎組3人をテスト登板させ最終戦の先発を決めるというものであった。 もちろん勝つにこしたことはないが第2戦の勝算は客観的に見て中日側には極めて低いものであった。 この第2戦巨人は夏場以降完全復活を遂げたと言って良い上原の先発が濃厚だった。 最近のピッチング内容と彼の大舞台になればなるほど力を発揮する勝負強さから見てこの第2戦を取るのは先発投手がよほどの好投をしない限りは至難の業となることは明白だった。 力量的にはこちらも終盤復活したエース川上憲伸とほぼ同等でありその川上を中4日で持ってくることも短期決戦ということを考えた場合決してありえない選択肢ではない。 しかし力量は五分でも休養十分の上原に故障上がりで中4日の川上が勝つ確率はそう高くない。 ならばそのリスクを避け第2戦は最終戦の先発候補3人を登板させてテストをする。 そして川上、チェン、吉見の3人で2つ取って最終戦で勝負を賭ける。 それが落合の選んだ最も巨人に勝つ確率が高い手であった。 そんな腹づもりで臨んだ第2戦。 結果は落合の計算通りの敗戦であったがその内容はオレ流皮算用を大きく裏切るものとなった。 先発朝倉は小笠原に2発6打点と滅多打ちを浴び2回KO。 3回から登板の小笠原は5回を投げたもののラミレス、李に一発を打たれて6安打3失点。 最後の山井は制球に苦しみラミレスが交代して守備固めに入っていた加治前にタイムリーを浴びるなど1イニングも持たずという惨憺たる内容。 2−11という大敗は点差そのものよりも宮崎組のただの一人も最終戦を任せようという気を起こさせるには程遠いピッチングであったことを露呈した大きな意味を持つ敗戦であった。 この第2戦を終えた時点で最終戦はグライシンガーの前に完敗する可能性が極めて高くなり中日にとっては事実上王手をかけられた一戦ともなったのであった。 もはや中日に残されたクライマックスシリーズを勝つ可能性は第3戦からの3連勝以外なかった。 その第3戦中日はエース川上を立てながら延長12回引き分けに終わった。 この試合の流れを大きく変えたのが6回1‐3と巨人2点ビハインドという場面で登板した巨人版宮崎組の西村健太朗だったことは中日にとっては皮肉な結果だった。 西村は初戦も一死満塁というピンチでグライシンガーの後を受けて登板し中村ノリを内野ゴロ併殺打に仕留めて流れを引き戻す好投を見せていた。 そしてこの第3戦では巨人投手陣が苦戦する右の3人ウッズ、和田、中村ノリをいずれも力勝負で三者凡退。 敵の主力を力で封じた快投がそのすぐ裏のエース川上を粉砕した李の一打に繋がったのは確かだろう。 第2戦で自軍の宮崎組がことごとく討ち死にした翌日巨人の宮崎組西村の好投によりエースを粉砕され引き分け。 負けに等しい引き分けと謳われたこの試合は3連勝しかない中日にとっては事実上の終戦を意味する引き分けでもあったのだった。 これで最悪2つ負けても最終戦でグライシンガーが決めてくれる。 そんな心のゆとりが第4戦先発の高橋尚成にストレートで挑む強気の攻めを可能にさせ中日先発チェンより長くマウンドに立っていられた大きな要因となった。 結果3勝1敗1分で巨人軍が昨年の雪辱を果たし日本シリーズに進出することが決定した。 試合後落合は「このままではだめ。まず監督が頭を白紙に戻さないと」という主旨のコメントを出した。 主力選手の高齢化に加えて若手の伸び悩みという深刻な状況は実は日本一となった昨年にも既にその兆候を現し始めていた。 今季もクライマックスシリーズ第2ステージには進出したものの上位2チームから10ゲーム差以上という大差はチーム力の低下が着実に進行していることを明確に露呈していた。 もちろん落合がそのことに気づいていないはずはない。 この類稀なる冷静さと大胆さを併せ持った名将はまた近い将来今と全く違う強力なチームを作り上げて巨人軍に挑んでくるに違いない。 それはまた来季以降の楽しみでもある。 さて本日11月1日からいよいよ2008年度の日本シリーズが始まる。 私にとって最大の懸念はマスコミ各紙が巨人の楽勝論を盛んにぶち上げている点である。 メイクレジェンドを成し遂げ中日をも撃破した今の巨人にとって西武は組し易しと考えるのはあまりにも軽率であろう。 くれぐれも中日に比べれば大したことがないなどというマスコミの根拠のない楽観論に惑わされず一戦一戦集中して戦って欲しいものである。 そして今季こそ真の奪回を果たして来季本当の意味での連覇を狙えるチームになってもらいたいと願うばかりである。 |
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